活用事例
2025-05-21

AIとテクノロジーを活用したNECグループアナリストの業務改革への挑戦

NECグループの業務改革プロジェクトで、プロセスマイニング・タスクマイニング・マニュアル自動生成を組み合わせ、見えにくかった業務プロセスの可視化と工数削減に成功。その具体的なアプローチと成果、今後の展望を紹介します。

AIとテクノロジーを活用したNECグループアナリストの業務改革への挑戦

NECビジネスインテリジェンス株式会社は、NECおよびNECグループ関係会社におけるバックオフィス系の共通業務に対応するSSC(シェアードサービスセンター)の役割を担っています。

前回は同社によるManualForceの導入経緯を中心にご紹介させていただきましたが、今回はコーポレートトランスフォーメーション統括部 データ・アナリティクスグループのビジネスアナリスト松島様にManualForceを活用した業務改革のお取組みについて具体的な内容をお伺いしました。

│見えない業務をあぶり出す、改革の背景

-業務改革の背景と本プロジェクトの出発点について教えてください

(松島様)弊社はデータとデジタル技術の活用による業務効率化を前提として、NECおよびNECグループの共通バックオフィス業務に取り組んでいます。その業務効率化を推進する中では、様々なテクノロジーを積極的に取り入れています。そこで、弊社の採用している技術やサービスをもとにした、テクノロジードリブンでの課題解決が本プロジェクトの出発点になります。そのため、プロジェクトの開始後はまず、業務部門に現状課題の洗い出しをしてもらいました。

その結果、改善点がいくつかありそうだと感じたのですが、特に「標準フローやプロセスがよく分からない」「マニュアル化できていない業務があるのではないか」、という声に着目しました。先ほども申し上げたとおり、弊社は業務効率化に長年取り組んできており、業務のプロセスマップやマニュアルを整備し、標準化を図っているはずなのに、「プロセスマップや業務マニュアルでカバーできておらず、まだ可視化されていない業務があるのではないか」「マップやマニュアルの粒度が荒い部分があるのではないか」と感じたからです。

そこで、CelonisとGaudi、そしてManualForceを活用してシステムログやPCログから業務プロセスの詳細を可視化することにより、現状のばらつきや無駄な手順を定量化・可視化することを狙いとしました。

│プロセスログ×PCログ×マニュアル自動生成の統合分析

-今回の具体的なアプローチについて教えてください

(松島様)今回の分析ではプロセスマイニングとタスクマイニングの両軸で分析を行いました。分析に際しては主に3つのツールを活用しましたが、それぞれの強みを上手く活かすことができたと感じています。プロセスマイニングでは分析対象が業務システムに蓄積されるログデータとなり、タスクマイニングではPCのログデータを対象に分析を実施しています。以下が今回利用した各種ツールの概要です。

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-プロセスマイニング-

Celonis(Celonis社)
システムログからプロセスデータを取得して業務プロセス全体を可視化し、課題を深堀分析(マイニング)するツール

-タスクマイニング-

Gaudi(同社によって開発)
PCログを自動で取得しPCの稼働状況や利用実態を可視化できる機能と、タスクを任意で設定してタスクごとの稼働時間を取得・可視化できる機能を有する業務生産性データ管理基盤

ManualForce(Orange Moon社)
PC上の操作手順を自動記録し、AIでマニュアルを自動生成するツール

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分析の流れとしては、まずCelonisを用いて発注業務全体の流れや、各工程における処理件数、リードタイム、さらにはイレギュラー処理の発生状況など、システムに記録されたログデータを定量的に解析することで、プロセス単位での改善ポイントを特定

次に、Gaudiによって各担当者のPC操作ログを自動で収集し、PCの稼働状況やアプリケーション毎の稼働時間を詳細に把握することで、改善ポイント上での非効率な時間のあぶり出しを行いました。

最後にManualForceで、仮説で改善の余地ありと想定したタスクのPC上での具体的な操作オペレーションの可視化と比較を行いました。

│あぶり出しによる標準化のインパクト

-どのように施策に落とし込み、効果を創出したのでしょうか

(松島様)分析の結果、「納品報告フォロー」というタスクで、ある担当者の操作回数が149回に対し、他の担当者では464回と大きな差が存在していることが定量的に明確になりました。それはまだ標準化されていない作業工程があるという明確な証拠であり、また、担当者たちがそれに気づいていなかったということも明らかになりました。

その事実に基づき、各担当者の該当タスクのPC作業状況をManualForceで作成したマニュアルで比較し、現場全体で統一された標準作業フローを策定するための改善策を策定しました。この取り組みにより、約336時間の工数削減という成果を実現できた点が、非常に大きな成果といえます。

(同社は上記以外にもCelonis・Gaudiを活用した各種分析結果を用いたリソースマネジメントで大きな工数削減を実現しました。)

ManualForce活用に関しては、本来の目的であるマニュアル作成だけではなく、定量的なPCログデータでは把握できない、画面単位・操作単位のログを可視化するためのタスクマイニングツールとしても有効活用できるのではないか、という仮説が検証できた、というか、自分のカンがズバリ当たった、という手ごたえを感じました。

これはManualForceに新たな活用価値があるという証拠でもあると思います。

│現場×分析チームの共創体制

-プロジェクトの成功要因に挙げられることは他にありますか?

(松島様)このプロジェクトを推進した体制が挙げられます。我々分析担当が単独で進めるものではなく、業務改革を実際に推進する担当者や現場で日々業務を行っている部門と、一体となって進めたことがプロジェクト全体の成功の鍵となったと思います。各組織が自分たちの専門領域で得た知見を共有しながら、一つの目標に向かって動くことで、具体的かつ効果的な改善を実現したと感じます。

│NECグループへの水平展開と高度化

-今後の展望についてお聞かせください。

(松島様)今回の成果は、現状の業務プロセスの一部における標準化と不要な手順の削減に成功した一例に過ぎません。しかし、私たちの手法はNECグループ全体に展開できる大きな可能性を秘めていると考えています。今後は、システムログとPCログの統合解析の精度をさらに高め、他の業務プロセスに対しても同様の「見える化」と標準化のアプローチを適用していく予定です。分析担当としては、現場の「実態」をさらに詳細に捉え、より最適な改善策を提案することで、全体の効率化に貢献したいと考えています。データとManualForceやCelonisといったAIや先端ツールを活用することで、業務効率化のさらなる高度化を実現すべく、引き続き尽力していく所存です。

-貴重なお話をありがとうございました。現場での具体的な取り組みや今後の展望をお伺いでき、非常に参考になりました。